関西初の”小児一律50円” 泉北高速鉄道10月から 大人運賃は値上げ 南海も同時改定予定

泉北高速鉄道は、2023年10月1日(日)に運賃改定を実施し、全体で3.54%値上げする一方、小児IC運賃を一律50円とする関西の鉄道事業者で初めての取り組みを行います。

泉北高速鉄道5000系電車(KKiSM/Photolibrary)
泉北高速鉄道5000系電車(KKiSM/Photolibrary)

小田急に続く国内2例目

大人の普通運賃はいずれの区間も10円値上げされ、営業キロ2kmまでの区間に適用される初乗り運賃は現行の170円から180円に変わります。現行の各区間の普通運賃は、国から認可されている上限運賃より10円安く設定されていますが、すべて上限運賃まで引き上げられます。

小児普通運賃については、PiTaPa、ICOCAなどICカードで泉北高速線内を乗車した場合、区間を問わず50円となる一律運賃が今回初めて設定されます。小児IC運賃を大人運賃の半額以下に一律で定めるのは関西初で、全国では2022年3月に「一律50円」の小児IC運賃を導入した小田急電鉄に続き2例目となります。なお、磁気乗車券で利用した場合の小児運賃はこれまで通り大人運賃の半額で、四捨五入の都合により現行運賃から変更ありません。

通勤定期運賃は普通運賃と同様、認可済みの上限運賃まで引き上げられます。通学定期運賃については全区間で据え置かれ、現行のまま変わりません。

泉北高速鉄道が運賃を改定するのは、消費税率引き上げに伴うものを除いて約25年ぶりです。今回は上限運賃を上回らない範囲での改定となることから、国への申請の必要はなく、実施運賃の届出のみが行われます。

同社によると、沿線人口が減少している中、新型コロナウイルス感染症を契機とした働き方の多様化も影響し、収入減が続いているとのことです。このような状況においても、全駅へのホームドア設置をはじめ、車両や設備の更新など安全に関する投資財源の確保が必要であることを改定の理由に上げています。一方で、小児IC運賃の一律50円化とともに、通学定期運賃を据え置くことで負担を減らし、子育てしやすい環境を提供することも目的の一つとしています(改定前後の運賃比較など詳細は下の図表を参照)。

【図表で解説】泉北高速鉄道 2023年10月1日(日)に運賃改定

高野山へ新たな観光特急車両

泉北高速鉄道と相互直通運転を行う南海電気鉄道も、2022年10月28日付で国土交通大臣に運賃改定の認可申請を行っています。2023年10月の実施を予定しており、認可を前提として泉北高速線と同時に改定される見込みです。

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南海の改定率は10.0%で、現行160円の初乗り運賃(大人運賃、以下同じ)は180円へと20円値上げされます。その他の区間の普通運賃は30〜40円引き上げられます。また、難波駅〜中百舌鳥駅間(現行340円)の申請運賃は370円ですが、新たに350円の特定運賃が適用され、最終的に10円の値上げ幅に抑えられます。

定期運賃では、コロナ禍以降の利用回復が鈍い通勤定期は割引率を下げる一方、通学定期は割引率を上げて値上げ額を抑制し、家計への負担に配慮するとしています。空港線加算運賃、りんくうタウン駅〜関西空港駅間の特定運賃、特急料金や座席指定料金などの変更はありません。

南海は2020年度に94億円、2021年度は60億円と2期連続の営業赤字を計上しています。2022年度に入っても、第1四半期の運賃収入をコロナ前の2019年度と比較すると、定期外で3割以上、定期は約1.5割の減収が続いています。これは、同時期の関西大手民鉄の中で最大の減収率であるとのことです。2021年度の輸送人員、運賃収入とも各ピーク時(輸送人員は1983年度、運賃収入は1996年度)と比べて4割以上落ち込んでおり、サービスの持続的提供に限界があると判断して値上げに踏み切ります。

今後は安全対策として、連続立体交差事業やホームドアの設置、車内への防犯カメラ取り付け、駅舎や高架橋柱などの耐震補強などへの投資を見込んでいます。中百舌鳥駅のリニューアルをはじめ、バリアフリー化やトイレのリニューアル、キャッシュレス化の推進など、駅への設備投資も進めます。

車両面では、バリアフリー基準を満たし省エネルギー性に優れた一般車両8300系の新造を継続し、既存の6000系などを置き換えていきます。世界遺産・高野山へのさらなる観光客誘致策として、2025年度を目標に新たな観光特急車両を高野線に導入することも計画しています。

また、運転業務の効率化を目的に、試運転車両を用いた自動運転の実証実験を2023年度に和歌山港線で開始する予定です。各支線で実施しているワンマン運転については、2024年度をめどに南海本線の一部区間への拡大を検討しているとのことです。